正直に言えば素晴らしいと思う。優れたインターフェースを持っており、NONMEMで解析を実行するときにいろいろと手間がかかる部分についてかなり手厚くケアしている統合解析環境というイメージだ。
逆に言えば、Phoenixの環境はNCAで使っていてもあまり意味はない。NLMEまで使って初めてありがたみがわかるといえると思う。
今日、1日NLMEのセミナーを受けて思ったが、C社はNONMEMについては真っ向勝負というか、かなり正面切って追いかけているといえる。PMxにおいてよく行われる、ほとんど常識になっている方法については、GUIのレベルで手軽にできるように実装しているのだ。
我々がNONMEMで解析しているときは、フォルダの中に大量のファイルが存在することになる。それについては、NLMEの場合はプロジェクトとして保管されるので1ファイルにしかならない。いくつのRunがあってもだ。
そして解析を実行した順番に、Workflowの中に保管される。これもわかりやすい。もちろん、Runが100を越えるくらいのときにどうなるかはわからないけど。SCMについては実装されており、解析ログが保管される。
また、診断プロットがかなりの量、デフォルトで出力される。みかけは結構きれいだ。これはC社のプロダクトでは基本的に美しい。雰囲気はRに似ている。
Bootstrap、VPCは実装されている。実行はかなり楽だ。PsNで行うと引数が結構かさむが、NLMEの場合はあまり考えずにクリック一つでそれなりに可能である。
推定理論についてのこだわりはある。サンドイッチ分散を用いるか否かはチェックボックスとなっている(笑)。FOCEのLindstrom-Bates、SheinerのELS、クラシックなFO、Laplacianはもちろん、Naive Pooled Analysisみたいな初期値用の古典、QRPEMのようなEMアルゴリズムも実装されている。
ユーザーモデルの定義もグラフィカルに、楽に実行できる。Trial Simulatorのグラフィカルモデリングの仕様は正直気に入らなかったが、NLMEはわかりやすくフレキシビリティがある。
データセットはオリジナルタイプとNONMEMフォーマットにも対応している。複数の投与経路のときとか、PKPDのように反応変数が複数ある時は、それぞれ別のカラムに変数定義するというところが違いだ。
また、データマニピュレーションもNLME内部で実行可能であり、わかりやすい。
さて、いいことばかりではない。一つはNONMEMで日頃扱っているようなかなり複雑なモデルや処理が可能かどうか。
正直に言えば、NONMEMをツールとして今行われている研究はかなりNONMEMの仕様を逆手にとった使い方をしているような部分も多い。それで複雑なモデルを用いているのだが、こういったLegacyが使えないかもしれないこと(未確認)。つまり、最大性能がNONMEMとどのくらい違うかは未知数なのだ。
もっといえば、テキストレベルでのモデル定義がどのくらいわかりやすいか。
Rのような関数内に引数を格納するタイプは正直使いにくい。SASのように何行も入力できるほうが融通が利きやすく、そこがNONMEMのコントロールファイルの優れたところなのだ。
また、比べるならばPDxPOPと比べるのがフェアなのかもしれない。NONMEMとPhoenixではちょっと比較の次元が異なる。
ちなみに、これはステマではない(笑) 私はNLMEとはこれまで縁もゆかりもなく、今日はじめて触ったのだ。もちろん、C社の人たちとは面識はあるが、ビジネスとしてのおつきあいはほとんどない。ただ、これは優れたソフトだということは認める。
PhoenixのNLMEは初学者の学習に向いており初期の学習曲線を改善してくれるというセールスがされている。確かに一理ある。
だが、一理しかない。もうちょっと言えば、たぶん本当は改善しないように思える。これは直観だが、このソフトがわかりやすいと感じるのは非線形混合効果モデルの解析にかなり慣れた人たちである。
大量のタブやチェックボックスが一度に目に入るのは、決して優れた特性ではない。よくわからないソフトだという印象だってありえる。テンプレ的なコントロールファイルがあるほうが、情報量が少なくてよい。
売り方、戦略はいろいろだ。私も陰ながら応援しよう。
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