疾患領域を追う
Pharmacometricsでは特定の疾患領域を専門として持つことが多い。
これは近年特に顕著になってきている。PMxは最初は母集団薬物動態として発展してきたということは、何日かの前のエントリーに書いたとおり。これが、そもそも血中濃度を評価する理由は有効性、安全性の科学的な解釈に有用だからであるから、とうぜんPKPD解析を含めることになる。そして臨床試験の結果予測への応用を俄然意識するようになった近年、病態の自然進行を考慮に入れることが重要となり、現在Disease Progression Modelの研究が盛んだ。
PKPD解析のあたりから既に萌芽がみえかけていたのだが、まだこの解析をやっているうちは、PDといってもそれを数値の並びとして見ていて統計モデリングするだけというスタイルでもなんとかなった。
最近では、PKPD解析もSemi-mechanisticな機序ベースのモデルとなり、疾患モデルも同様に簡易ではあるが機序ベースのモデルを構築するようになっている。これは、本質的に影響の高い因子同士の関係をモデル化すれば、未知のデータに対する予測性が高いだろうという考えによる。MBDDにおけるモデルは、一種の外挿性があることがその使用の前提であるので、手元のデータに対するDescriptiveなモデルでは不十分である。この、予測性をあげるためのモデル構築には、病態生理学についての踏み込んだ知識がいる。
そして近年は、明らかに疾患領域におけるSpecificなモデルが報告されてきている。腫瘍増大に関するモデル、グルコース-インスリンモデル、ウィルスの増殖に関するモデル、菌の多剤耐性を考慮するモデル、HbA1cモデル、生存曲線モデル。。。
これらはStructureを理解すること以上に、疾患の背景を理解してフォローすることが重要だ。
そのため最近読む論文のうち、生理学や薬理学、医学のものが徐々に増えつつある。昔は統計が多かったのだが、読むべき論文に変化がでてきつつある。
実感したのは、疾患領域を複数追うというは大変だということだ。糖尿病とがん領域の2つを今は事実上やっているのだけど、これはまぁサッカーしながら水泳するようなものである。いや、基礎体力があればなんでもできるとはいうけど、このボリュームはたまらない。好んでそうなったわけではないが、まぁ何事も「やらぬよりやったほうが楽しい」から、あきらめて楽しむことにしよう。
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