薬物動態

WinNonLin のセミナー

今日は神谷町にある某C社で、WinNonLin Phoenix のセミナーに参加。久々の受講生。

いやぁ、とても面白かった。母集団解析じゃなくって単一被験者データ解析だけど、基本はここだよね。いいレベルのセミナーだったと思います(・ω・)

実はPopulation PKをやるには、混合効果モデルをやるには、ベーシックな回帰分析の知識や経験がけっこうな量必要だ。それなしでNONMEMなんて、まさに事故ろうというのもいいところ。

今日のセミナーは講師の方もちゃんとタイムコントロールをしながら、単純にPhoenixの使い方を教えるだけでなく、モデル診断とか推定の原理にも言及していて、とても良いセミナーだったと思う。統計の知識が決して十分ではない動態の出身者が自然にかつ実践的なモデリングに入れるような工夫がされてると思った。

あと、データがよくできてる。教えたいことについて直接的なデータだけど、それができがよい。こんなデータ作れるのかぁと思った。

さて、ヨーロッパにいたころからPhoenixのセミナーは何度か受けたけど、やっぱり使いやすいね。慣れると特に。

前のWinNonLinはおもちゃみたいなソフトだったけど、現在はどちらかといえば統合型のプラットフォームみたいになってる。デ-タセットの加工や、グラフ描画などの周辺機能もより強化してるし、NCA、LMEにも対応しているし。Deconvolutionとかも。

解析していて楽しいなと思えるようなソフトにもなっていると思う。

NONMEM、SASに続き、自分にとってソフトウェアの殿堂入りかも。Rよりは好きだな。

とりとめもなく書いてしまった。まっとうなソフトウェアレビューはもう少ししたら。

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薬物動態プロファイル

薬物動態プロファイルってよく企業では使う言葉だけど、どういう意味だろうと考えていた。

もともと、profileって言葉が難しいんだよね。英語で横顔、輪郭、外形を表している。プロフィールというとフランス語。意味は同じ。

プロファイルとは、それを知ることで実体がどんなものなのか理解できるようなものでなければならないだろう。そうでなければ輪郭にはならない。全身クリアランスの値が1L/hというだけでは薬物動態を想像はできないだろうから、それはプロファイルではない。

たぶん、薬物動態の特徴の「あつまり」というのが意味として近いのではないだろうか。

化合物の薬物動態を想像する、あるいは理解するには、いくつかの薬物動態パラメータはもちろん、代謝物が何種類あってそれぞれがどのくらい生成するかとか、種差はどうなっているとか、吸収部位がどこであるかとか、薬物動態についての情報がセットになっている必要がある。

これには、PKパラメータ以外にも、血中濃度が2相性を示す、とか必要であればある濃度以上を持続する時間がどのくらいかとか、そういう言語で表現できるような情報も含まれるといっていいだろう。こういう意味では、PKパラメータよりは意味が違っている。より広い意味を持っている。

これこれのデータのセットでなければならない、という決まりもないだろう。どこかの誰かが、言葉の意味を定義したわけでもなさそうだ。自信はないが一応調べてみた。

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母集団薬物動態解析

よく思うのだけど、母集団解析というのは面白い言葉だ。

統計学においては母集団と標本は厳密に区別され、統計解析の目的は母集団の推測にあることがほとんどである。そのため、母集団解析という言葉が用いられることはない。

母集団解析とは母集団薬物動態解析あるいはそれを歴史上の起点にもつPharmacometricsの世界で用いられている。これは日本語の問題ではなく、Population Pharmacokinetics、Population approach、Population analysisと呼ばれる専門用語の訳である。

私は統計学が好きなので、この言葉には違和感を感じる。が、現状このように用いられることはしょうがないと思う。

理由は、そもそもの薬物動態解析というものは統計解析を示していないからだ。薬物動態解析は主として薬物速度論解析を表している言葉である。単一の個体から得られた薬物の濃度の経時変化を、いかにうまく要約するか。いかに適切に解釈するか。そしていかにうまく予測するか(予測のために役立てるか)が、学問上の最大の関心事であったし、それは今もかわらない。

それは京大のYamaokaによってモーメント解析が提唱されたことによってもよくわかる。個体データに対してモデリングを繰り返すことは、正直しんどい。同じ薬物でも個体ごとにモデルが変わってしまうことがあり、それは本質的なことというよりはサンプリングタイムや定量下限のような人為的な影響もある。モデルは必ずしもうまくあてはまらないから、検討に時間がかかる。そこに、どんな濃度推移をしていてもその個体の薬物動態を要約できる方法が提唱されたことは、薬物動態解析を非常に楽にしたのである。1978年のことだ。このモーメント解析は血中濃度推移自体を確率分布とみなすものである。この考え方は、薬物が投与されてから循環血中に移行し、そして体内から消失していくという経時推移、微分方程式モデルの考え方をまったく取り払った静的なものであり、薬物動態という観点からは発想の転換としかいいようがないものであった。統計学的な概念を導入し、モデルから解放されることによって、いかなる個別濃度推移も解析可能にしたわけである。もちろん、その代償として、薬物動態の特徴を要約する、記述することが主体となり、システムに対する理解は浅くなり、予測については放棄するわけである。

このことからも、薬物動態解析はまず個別解析にフォーカスがあたっていたことがわかる。薬物動態解析においては、薬物動態をうまく表すためのパラメータにはどのようなものが適切かということも高い関心があてられた。速度定数は数学的に扱いやすいが生体のいかなるプロセスをも反映しておらず、クリアランスや分布容積のほうが実体により近い。実体に近いというのは、in vitroで評価される酵素やタンパク質のデータから、解釈や予測が可能であることを意味する。クリアランスという概念は1973年にRowlandが提唱したものだが、現在に至るまで薬物動態解析における根幹の概念である。

このような背景から、集団における薬物動態を統計学的に推定するという発想は決して当時の薬物動態で支配的ではなかったものと考えられる。

そのため、母集団薬物動態という、「母集団」という呼称がつけられるようになったのは自然のことだったのであろう。母集団薬物動態解析は、1972年にSheinerによって歴史に登場する。この当時はPopulation pharmacokineticsという呼称はされていないが、概念はここで登場している。そして最初のCase Studyが1977年に発表される。SheinerはDigoxinやProcainamideのような狭い安全域の薬剤の投与設計に関心があり、これがモチベーションになったと考えられる。論文においては既に最尤法(Maximum Likelihood Method)の適用が記述されており、方法論的には70年代後半にNONMEMの開発とともに検討されている。

そして、Population pharmacokineticsという呼称は1980年のSheinerとBealの論文タイトルに用いられた。NONMEMの最初のバージョンが1979年に開発され、それを用いたPhenytoinの解析である。Phenytoinもまた、非線形動態を示す使いづらい薬剤であり、第1報がこれであったことはSheinerの日常臨床における母集団解析の適用という視点から考えて、自然である。おそらくこの論文により、Population pharmacokineticsという概念と呼称が広まっていったのだろう。第2報、第3報が81年、83年に報告され、以後の発展については言うまでもない。

歴史的に興味深いことは、非線形混合効果モデルについては統計学上もSheinerの論文が初ということである。混合効果モデルはLongitudinalなデータについての直感的にわかりやすい解析であるが、線形混合効果モデルは1970年代後半にHarvilleによって研究され、我々が今知っているような形に定式化されたのは1982年のLairdとWareのBiometrikaに掲載された論文であり、そこでNotationを含めて現在の我々の知る形となったのである。これを考えると、母集団薬物動態解析がいかに特殊なものであったかがわかる。

しかし、非線形混合効果モデルの適用や発展が主として統計学者ではなく、むしろ実務家といっていい薬物動態の研究者をベースにして発達していったことは、決して偶然ではない。一般に、反応変数が曲線を示していても多項式モデルに代表されるように線形モデルでの解析は可能である。しかし、そのようなモデルにおいては、観測範囲を越えた領域への外挿や予測、パラメータの解釈が不可能であることが多い。非線形モデルが適用されるのは常に、その応用分野において評価が確立している構造モデルを適用することによって、予測や解釈が発展する状況においてなのである。非線形モデルの重要性が高くかつ大規模に行われており、かつデータに階層が存在し、変量効果の考察が重要な意味を持つほどにデータがばらつくのは医学薬学領域であり薬物動態だったわけである。非線形モデル自体は工学領域でも汎用されているが、繰り返し測定とクラスターの存在を無視しえないのは生物学領域に多く、線形混合効果モデルの応用が農学、畜産、生態学において進んだのも偶然ではない。

薬物動態におけるCompartment Model解析は、1970年にDedrickの手によってほぼ仕上げられている。またクリアランス概念や分布容積については1970年代に概念的に確立したことを考えると、1970年代後半から1980年代の前半にかけては、薬物動態解析の中に統計学的な概念が持ち込まれた時代であると考えることができよう。そのうちの1つは個別解析における適用と汎用化であり、1つは集団の薬物動態特性の把握だったわけである。

母集団薬物動態という言葉の起源はこのようなものであり、それはこの学問領域の誕生したときの時勢を反映している。その後、この領域はPharmacometricsというより広い概念に包括されていくことになる。Pharmacometricsは言葉自体はかなり早期に用いられるようになるが、広く用いられるようになるのは、医薬品の開発生産性の低下をきっかけとする臨床方法論の見直しと、それに伴う臨床データのモデル解析としての学問領域へと進化して定義されてからであり、それはおおむね2004年のFDA White Paperの公表と重なるだろう。

我々はみな、この領域の創生をになったSheinerらの末裔である。そして、Newtonの言葉にもあるように、我々は巨人の肩にのっているからこそ遠くまでを見渡せるのである。

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難しい推定問題

スパースデータからのあるパラメータの推定問題を考えている。あまりよく書けないが、今週末はそれに取り組まざるを得ない。最近の多忙さでちょっと疲れがかさんでいる。

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この数日の調査

統計の勉強を進めたいのだが、ある業務へ集中せねばならない状態で進みが遅い。集中するとある部分については深まるが他のことがおろそかにはなる。

やっていることは薬物間相互作用リスクの評価と急性中毒の対処法の基礎調査。後者はいずれ誰かから尋ねられるだろうからやっている。ここ数日は臨床動態の仕事が多い。

古典的薬剤が多い領域の調査をしているが、意外に尿中未変化体排泄率やBAについても臨床RI試験で調査されているようで驚く。考察が楽になる。こうやって広く調べるときは、Goodman & Gilman が初動調査にはむいている。持ち運びができないのが欠点だから、自宅では自分の本を、会社では会社の共有図書をみるというようにしている。3 kgのモバイルPCを持ち運べても G&G は無理である。本というものは重い。

DDI の惹起は生理学的PKの考察でなすほうが良いのだが、この手の論理は上層部にちゃんと理解させることが難しいので、うまい説明方法を考えておかねばならない。タンパク結合率の変化リスクがそれにあたる。結合率の変化は非結合型濃度の絶対値を変えないのだが、これは説明に工夫がいるだろう。

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Vd

WinNonLinのモーメント解析の静脈内瞬時投与の場合、Dose / C0 で計算される Vd がないようだ。Vdssはあるが、他は Vz のようだ。

自分は臨床解析をやっているから瞬時投与というケースはないからよいのだが、非臨床解析の部分のQCをした後で、ふっと頭をよぎる。誤解している解析者がいるような気配。

モーメント解析というもの自体は、優秀な頭脳をもってして行なうようなものではない。多少のこだわりや細かさは必要だと思うが、モーメントという言葉の意味をわかるとか血漿中濃度推移を確率分布とみなすとかそういう理解はほとんど不要である。実行自体は非常に容易である。

必要なのはソフトウェアの使いこなしというレベルを越えたものではない。だからこそ、ちゃんとやらないともったいないと思う。

ちなみに、薬物動態の特徴を集約し、意思決定に反映し、開発が進むにつれ動態プロファイルについての見解の精度を上げるにはどうしたらよいか? メタアナリシスとしてのPPK解析、モデル解析が適していると思う。今日はそんな話をしていた。この辺りは、また別の機会に理解を深めるとする。

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新刊

Photo 少々高価(8500円)であるが、書店でみかけた。輸送担体だけではなく、構造活性相関に対してのアプローチや反応性代謝物、Population Pharmacokinetics についてもイントロダクション的な章が設けられている。もちろん、輸送担体についてが最も詳しく、遺伝的多形やソーティングコントロールについても記述されている。

若い人たちはこういう本からこの領域に入ってくるのかと思うとすばらしいと思う。母集団PK/PDなど、統計学的な接点領域についても適切な教科書が必要だと思う。

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PK パラメータの算出

各個体/被験者ごとの PK パラメータの算出は”統計解析”なのか? 定義はある意味どうでもいいことなのかもしれないが、あるプロトコール違反があったときにその被験者の PK パラメータを算出してよいものかどうかは議論が生じうる。

まず、学問的にはPKパラメータ算出は”統計解析”の一分野に属すると考えてよいだろう。非線形最小二乗法であれ、モーメント解析であれ、統計学的概念なくして提唱されているものではない。モーメント解析は統計解析らしくない印象があるかもしれないが、MRT などモーメントという概念そのものが統計解析に原点を持つ以上、別物ですとはいいづらい。およそ測定値からその要約量を算出するときの扱いに、統計学的でないものはなかろう。もちろん、任意に○○インデックスみたいなパラメータはいくらでも作りうる。ただしPKパラメータの場合は、○○インデックスのような総合評価指標よりも性質が学問的に研究されており、その信頼度と実績はかなりあると考えてかまわないだろう。

臨床試験や拡大して非臨床のフィールドにおいて、”統計解析”とはそれを通じて母集団を推定した結果と考えられるのではないかと思う。記述統計量やそれらの間の推定・検定を通して、群としての性質を示して一般化可能性が担保されてしかるべき量を得ることである。つまり個別データについては、統計解析の結果ではない。これは血液生化学や有効性指標をはじめとしてたいていの場合は生データそのものになるから、矛盾はない。ところがPKパラメータの場合は、まず個別パラメータを算出してその後にそのパラメータの記述統計量を算出することで母集団を推定する、2段階方式になる。このときに、PK以外の統計解析は2段目の部分しか存在しないのだ。

よって、プロトコール違反があったときにPKパラメータを出してはいけないということはない。ただし、解析の目的によっては統計量をだすことができない。そう考えておけばいいと思われる。

もちろん、これは運用上の問題であろう。PKパラメータすら出さないという考え方もあるだろう。ただし、PKパラメータはCmax, AUC, Tmax など自分たちがした介入もしくは一種の侵襲の量的指標という意味が強いから、全く飲まなかったという例をのぞけば、予定通り算出したほうが倫理的であると考える。

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任意の区間の AUC

WinNonLin である任意の区間の AUC を出すことが最近多い。補外の仕方をメモしておく。

原則、採血点と必要な区間がずれている場合、WinNonLinはその点の濃度をAUC算出に指定している方法に基づいて実施する。よって、Linear-trapezoidalなら線形補間した濃度に基づいてAUCを求めるわけだ。一方、log-trapezoidalなら対数線形補間となる。

このルールは測定値が存在する(定量可能だった)最終採血点までのルールである。それ以降の採血点へ補外して AUC を求める場合は、lambdaが求められているかどうかが重要である。WinNonLinは算出された半減期に従って血中濃度を必要な点まで補外して求める。

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統計解析計画書

けっこう重たい計画書を終わらせる。しんどかった。PKパラメータは常識的にこのくらいの桁数までとか、こういう算出方法でとかあるにはあるのだが、やりたいことと実データの精度から桁数を決めたり、解析方針を決めるのに、今回は分量が多かった。

PKの場合はブラインドの意味が異なる。つまり数値は2週間から長いものでは1ヶ月くらいで得られるのだが、背景因子など被験者対応がつかない。PlaceboかActiveかは自明なのでマスクにはならない。よって、おのずと並行解析や探索的解析を実行しながらCSRでの論述の枠組みや必要なマテリアルを考えていくことになる。

その並行解析や探索解析をいろいろやりつつ、かつ CSR で非報告であっても何らかの照会が来たときにそれなりの精度を持つパラメータが計算できるように報告値を設計するのは結構大変である。今回はきつかった。

明日、あさっては楽をするつもりである。区間推定の簡単な講義を1つやって、混合効果モデルの輪講が1つ、PPK/PDの英語教材作成を少し。

こういうのが一番楽しい。でもすぐに、IB改訂の仕事が始まる。

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