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ηとω

2002年の冬の話だ。

私は母集団解析の基本的なところを、NONMEMを使いながら勉強していた。その頃、私のほかにも何人か、NONMEMを勉強している人がいた。会社の上司が少しだけ母集団解析をかじっており、それを私たちに教えてくれていた。

私はNONMEMにおいて出てくる用語にいささか混乱していたところがあった。ηとω、εとσである。慣れれば多少ぞんざいに用語を用いても通じるのだが、ここはちゃんと使わないといけない用語なのだ。

NONMEMにかかわる論文を読めば、特にnotationに気を使っている論文においてはちゃんと使い分けている。ただ、初学者には意外に区別がつかないものなのだ。

POSTHOC推定とは何かも理解することが難しかった。

このことを考えると、いつも思い出す風景がある。12月もクリスマス近かったと思う。

私はこのNONMEM勉強会にある日、出席できなかった。私の担当プロジェクトはそれなりに忙しく、その日、急場の血中濃度測定が入っていた。

勉強会の休憩時間だったのだろう。同じく参加していた人が実験室に訪れて、私に訊いた。

「PKモデルでよくある、Centralコンパートメントに他のコンパートメントが複数つながっているやつって、なんて言ったっけ」

私は、分析用のバイアルをオートサンプラーに並べているところだった。「マミラリーモデルじゃないですかね」。

「あぁ、そうだった」

簡単な会話だったが、なぜか今でもよく覚えている。

その冬の夜は寒かった。私は勉強会の中では目立つ生徒ではなかった。勉強会は5回くらいで終了した。その後、選ばれし人財(?)に対してだけ勉強会は続いたと思う。私は少なくとももう関係はなかった。

私は母集団解析を一人で、論文や教科書をベースに学ぶことに決めた。そして会社の外でいつの日か出ていけば、何か自分の求める答えが見つかるのではないかと思った。

それを決めたのが、このNONMEMについての社内勉強会だったというのは皮肉だったかもしれない。

この会のメンバーは今考えても特殊だった。選ばれし人財たちは会社から去り、別の分野に移ったりしている。会社に残った人もまた別のことをやっている。外に出ていった私だけが今もこの領域を続けている。

いくばくかの感傷もあるが、あの冬の夜が忘れられないのはなぜだろう。

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