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ロールシャッハ

2006年の秋ごろの話だ。

私とその人はロジスティック回帰をきっかけに、残差診断について考えなおしていた。非正規分布するデータの場合は、モデル診断が困難であるのは知られたことであり、残差も重要な意味を持たない。が、それをきっかけに、誤差が正規分布するモデルについての診断を見直していたのだ。

後になれば残差診断の重要性をもっとうまくまとめることができる。指標としての統計的特性が明らかであり利用しやすいことが、残差には求められる。ただ、その頃の私たちは、もうすこし無邪気だったと思う。

重要なのは人の目が高い性能を持っていることだ。特に、直線性からのずれについての鋭敏さがあげられる。プロットを作ってみるとわかるが、直線性からのずれに対する感度は、相関係数が0.95程度の2変量関係でもはっきりととらえられる。

しかし残差診断については、ある意味「はじけている」研究者もいる。Nicholas Holfordがその例だ。彼は残差診断をあまり重視していない。それどころか、解析の正常収束もあまり重要視していないのだが。

私たちはよくいく店にいた。いつもの通り、食事をして解析のことを勉強する。

私たちは診断については熱心だったから、残差の持っている性質を丹念に学んでいた。が、GOFについてどのくらいで良しと判断するのかがわからなかった。それで良いという人もいれば、不満足な人もいうるような診断法であることは、間違いなかった。

その人は残差診断を、ロールシャッハテストのようだと言った。見る者ひとりひとりに異なる印象を与えるものだ。ロールシャッハは本当に意味がない図形であるが、GOFは違う。が、それに対する態度が人によって異なることは、似ていた。モデルを「これでよい」というには、なんとなく図太さが必要なような気もしたものだ。

診断の話を振り返ると、このロールシャッハの話を思い出す。GOFの見方についてのセンスを得るには、たくさんの経験を積むことと、たくさんの論文を読むことである。

こういうことに気づくのは、科学というよりはしたたかさの部類に属する。あの秋、私たちはまだそういうものを持っていなかった。

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