セント アンソニー バリエーション
W ヒル作曲の吹奏楽曲。私は中高とトロンボーン吹きとして吹奏楽部に所属し指揮もやっていた。思い出の深い曲である。
この曲の作曲は確か1979年、アメリカの大学生向けの曲として作曲された。これを1981年だったか、文教大が吹奏楽コンクールで選曲し演奏する。11分の原曲はコンクールでは演奏しづらいため若干編曲したといわれる。
しかし結果は銀賞。その後1985年、天理高校がこの曲をさらにアレンジし演奏した。全国大会では金賞を得ることができた名演である。これ以後、吹奏楽の世界で定着する。
作曲者の許可を得、今ではこの天理高校のアレンジ版が日本では演奏される。全国大会での演奏回数は20回近いはずである。難易度の高い曲であり、吹きこなせれば間違いなく上位にいける。
しかし大切なのはこの曲の美しさである。17世紀の聖人、聖アンソニーをモチーフにしたこの曲は、原曲は美しいコラールである。ハイドンやブラームスがその旋律をモチーフとして変奏曲を書いている。
私は吹奏楽曲はあまり好きではなく、管弦楽を愛していた。が、この曲を聴くと、管楽器の表現力の美しさに感動する。
曲は第1から第4変奏からなっている。第1変奏は力強いファンファーレで始まる。その後旋律は変容しながら第2変奏へ進む。第2変奏は聖アンソニーの主題がフルートを主体とする木管アンサンブルで始まり、金管のコラールへ続く。この第2変奏は簡単ではあるが演奏する側にとっては精緻なハーモニーとクレッシェンド・デクレシェンドによる表情があり、全曲中でも白眉である。
第3変奏は変容度の高い舞曲となる。吹奏楽の各パートがからみあいながら変奏を紡ぐ、バランスと技巧の高い部分である。サックスのソロに木管の浮遊するかのような和音が寄り添う場面からフーガに入っていく。対話するようなフーガは木管楽器に始まり、なんと機動力の弱いトロンボーンが中音域の主体を構成する。
この危ういバランスの中でフーガが組み上げられた後に、トランペットのファンファーレとともに第4変奏にいたる。ここではもう一度抒情的な聖アンソニーの主題に戻り、美しいハーモニーとともに音楽は昇華しす。鐘の音が聞こえる中で終曲を迎える。
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